0602 『ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか』– 2014/9/25 ピーター・ティール (著), ブレイク・マスターズ (著), 瀧本 哲史 (その他), 関 美和 (翻訳)

とてつもない本が出た。

今月はほんと良書のラッシュ!
『CEOからDEOへ』、『Yコンビネーター』と併せて読みたい一冊。

なぜ、ペイパル創業メンバーからは
優れた起業家が生まれるのだろう。

その疑問に答えてくれるのが、
ペイパル創業メンバーで、
シリコンバレーで現在もっとも注目される投資家、起業家の
ピーター・ティールの本書だ。

ティールが投資した企業は、ずば抜けている
フェイスブック、テスラ・モーターズ、ユーチューブ、
リンクトイン、スペースX、イェルプ、ヤンマー。

何より驚かされるのは、その経営思想。
「はじめに」からぐんぐんその言葉に引き寄せられる。


ビジネスに同じ瞬間は二度とない。
次のビル・ゲイツがオペレーティング・システムを開発することはない。
新しい何かを作るより、在るものをコピーする方が簡単だ。
だけど、僕が新しい何かを生み出すたびに、ゼロは1になる。

いま、多くの分野でイノベーションという言葉が騒がれている。
しかし、実際、世界にインパクトを与えるイノベーションを
起こしているものはどれほどあるのだろうか?

リーン・スタートアップは、
ドットコムバブルの産物であり、
それは、実際の成功するモデルと真逆であることを
ティールは語る。

1小さな違いを追いかけるより大胆に賭けた方がいい
2出来の悪い計画でも、ないよりはいい
3競争の激しい市場では収益が消失する
4販売はプロダクトと同じくらい大切だ

この4つの法則は、ドットコムバブル後できた
スタートアップ界の戒律とは真逆だ。

今語られている「イノベーション」の定義そのものが
小さく感じられ、私たちが思っている「イノベーション」とは
ティールが定義する「ゼロからイチ」とは程遠い。

本書で私にとって、何より嬉しかったのは、
それは「独占」「業界の圧倒的ナンバー1」で
あることの大切を思い出してくれたことだ。

私のキャリアのスタートは、GMOインターネットだった。
代表の熊谷正寿氏口癖は、「圧倒的ナンバー1」。
その大切さを思い出させてくれる。

やはり私も圧倒的ナンバー1をとっていく
サービスを作りたいと心に決めた。

ペイパルの初期メンバーと、テスラ・モーターズのイーロン・マスクは一緒に働いていた時期があることは多くの人が知っているだろう。
それは、ペイパルとXドットコムが合併したときだ。
最も、マスクの記憶ではあまり良い思い出ではないとされている。
けれど、マスクにティールは投資もしているし、
マスクのビジネスはどこか、ピーターの経営思想に影響を受けているようにも思えた。

それでは、ティールが描くビジネスの根幹とは
いったい何なのだろうか?

それは、下記の7つの質問を考えることだ。
1.エンジニアリング
段階的な改善ではなく、ブレークスルーとなる技術を開発できるだろうか?
2.タイミング
このビジネスを始めるのに、今が適切なタイミングか?
3.独占
大きなシェアがとれるような小さな市場から始めているか?
4.人材
正しいチーム作りができているか?
5.販売
プロダクトを作るだけでなく、それを届ける方法があるか?
6.永続性
この先10年、20年と生き残れるポジショニングができているか?
7.隠れた真実
他社が気づいていない、独自のチャンスを見つけているか?

この質問を唯一答えて、環境ビジネスの中で生き残っている会社がある。
それは、テスラ・モーターズのマスクだ。

本書の最後は、4つの未来シナリオを描いた上で、
レイ・カーツワイルのシンギュラリティの話が載っている。
しかし、そのシンギュラリティを達成するかどうかよりも、
いかに自分たちが目の前のチャンスを掴み、仕事と人生において
新しいことを行うかどうかが大切だと描いている。


今僕たちにできることとは、
新しいものを生み出す一度限りの方法を見つけ、ただこれまでと違う未来ではなく、より良い未来を創ること―つまりゼロから1を生み出すことだ。

本書は、『CEOからDEOへ』『Yコンビネーター』と是非一緒に読んでほしい。
素晴らしい一冊だ!

(渡邉康弘)