0603 『どうしてあの人はクリエイティブなのか?』 デビット・バーカス (著) ビー・エヌ・エヌ新社 (2014/10/21)

『どうしてあの人はクリエイティブなのか?』。
デビット・バーカス (著), プレシ南日子 (翻訳), 高崎拓哉 (翻訳)

単行本(ソフトカバー): 320ページ
出版社: ビー・エヌ・エヌ新社 (2014/10/21)

私たちは、一度は、
・どうしたらクリエイティブになれるのだろう?
・すごいアイデアが浮かぶときと、全く浮かばないとき
その違いがあるのはなぜだろう?
・ひらめきはどこからやってくるのか?

思い浮かべたことはあるのではないだろうか?

古代ギリシャ、ローマ、そして近代にいたるまで
「創造性は神の恵み」であると信じられ、
様々な儀式や信仰が行われていた。

しかも、多くの人々は未だに創造性とは
謎めいた神聖なものだと思っている。

しかし、実際は「神頼み」以上に役立つのは、
クリエイティブな人々や革新的な研究をすることだ。

創造性とは、神の恵みや祝福というより、
適切なエコシステムを設計し、
そこに適切な訓練を受けた
幅広い視野を持つ人々を集めることで
得られる結果であると、著者は語る。

本書では、創造性に関する
様々な迷信を扱っている。
この一つ一つの迷信を見つめることで、
真のクリエイエティビティに
アクセスすることができる。

そのクリエイティブに関する豊富な事例から、
様々な真実が明らかになるのではないかと思う。

本書で扱っている
クリエイティブにまつわる迷信と実際。

・「ひらめいた」の迷信
新しいアイデアは直観的な一瞬のひらめきではなく、
課題やプロジェクトに取り組んだ成果である。

・「生まれつきクリエイター」の迷信
創造性は個人の性格または遺伝子とは全く関係なく、
むしろクリエイティブ・タイプなど存在しない。

・「オリジナリティ」の迷信
クリエイティブなアイデアは発信者独自のものではなく、
実際には、古いアイデアの組み合わせによって産まれ、
アイデアを共有することでイノベーションが広がる。

・「エキスパート」の迷信
専門家がいつも優れたアイデアを思いつくとは限らないし、
むしろ、専門家がいることでかえって、アイデアが実行できない
ケースも多い。

・「インセンティブ」の迷信
金銭などのインセンティブは、モチベーションにも創造性にも
良いどころか、かえって悪くなるケースが多い。

・「孤高のクリエイター」の迷信
一部の天才が成し遂げた偉業のように思えることも、
実際にはチームの努力によって、
クリエイティブな成果があがっている。

・「ブレーンストーミング」の迷信
ブレーンストーミングをするだけで突破口が開けるように感じるが
残念なことに、アイデアをただ出し合うだけでは、ブレークスルーには
つながらない。

・「団結」の迷信
従業員が仲良く仕事をしてほしいと思うのは、経営者に多いことだが、
実際は仲良しの団結は、画期的な思考の妨げになっている。
むしろ、仲良しではなく、反対意見や対立をプロセスに組み込んだ方が
最高の仕事を確実に成し遂げることができる。

・「制約」の迷信
制約は創造性を妨げになると思われているが、実際は、
多少の制約があった方が、創造性を高まることがいくつも研究結果からわかっている。

・「ネズミ取り」の迷信
多くの人は、一旦クリエイティブなアイデアが浮かべば、
仕事は終わりだと思っているが、実際は違う。
アイデアをどう、実現するかが大切なのだ。


アイデアをイノベーションに発展させられたのは、
やはり、クリエイターが粘り強かったからだ。
そして、リーダーも革新的なチームを作るだけでは足りない。
自分の中のバイアスをうまく矯正し、有望なイノベーションを
より早く受け入れられるようになる必要がある。

そして著者はこのように、本書を終えている。


より多くの優れたアイデアを生み出すだけではなく、
既に持っている優れたアイデアを広める努力も大切なのである。

名著とはこういう本をいうのだろう。
3Mのポストイット誕生の話や、電話の発明、ウィンドウズOS、
最新のエバーノート、37シグナルズ(現ベースキャンプ)など。
本書はクリエイティブ事例の宝庫だ。
参考文献リストも素晴らしい。

特に「団結」の迷信、「ネズミ取り」の迷信は非常に参考になった。
何かクリエイティブなチームを作る際には、
仲良しであること、反対意見をいうものは
排除しないといけないとある経営者から思っていたが、
実際には、やはり大きな間違いであったことがわかった。

しかも、優れたアイデアほど、人を落ち着かせないことが多く、
反発を食らってしまう。
いかに、反対意見を出し合える環境をつくりつつ、
優れたアイデアをしっかりと守っていける場を作れるかが
大切であるようだ。

こんな本を待っていた。
非常におすすめの一冊だ。